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2005/03/23

(息子)おとうさんのうそ

 ぼくのおとうさんは「たかおよしき」っていうんだ。歴史研究人(れきしけんきゅうにん)っていうのをやっているらしい。
 ぼくが寝ている朝早くに会社(?)に出かけ、ぼくが寝てしまっている夜に帰ってくる。なんだかオバケみたいなんだ。だからあんまり「いってらっしゃい」「おかえりなさい」をいったことはない。休みの日もお昼からお仕事。まるでゼンマイじかけのオモチャみたい。たまたま家にいるときも、
「おれは忙しいんだ」
 っていつも部屋で探し物。おかあさんは「整理がわるいだけネ」といっている。
 おとうさんは「おれは整理がよければ今ごろは大学者だ」「おれの部屋にはすごい史料がある、しかし何処にあるのかわからない」って威張っているけどそんなの自慢になるの?

 おとうさんは相当なうそつきらしい。
 このあいだ夕飯のとき、おばあちゃんが「ヨシキさん××って何?」とおとうさんに聞いた。するとおとうさんは得意気に「ああ、××とは△△ですね」と説明する。
 するとおかあさんは新聞なんかを取り出してきて「それ、違うわよ」っていうんだ。おとうさんは缶の穴みたいにくちをポカンとさせてから、ちょっと照れ笑いして「あれ、すみません」とおばあちゃんにぺこりと謝る。
 おかあさんは「あんた馬鹿なんだから、そとであんまりベラベラ喋らない方がいいわ」って助言するんだ。でもおとうさんは「俺が喋らなかったら商売あがったりだ」ってションボリ。「歴史講座」で2時間も喋らなきゃいけないんだって。2時間も間違いだらけの話をするんだろうか? それはそれですごい才能だ。

 そういえば、ドライブのとき「雲はなんでできてるの?」っておとうさんに聞いたら、おとうさんはくそ真面目な顔で、
「綿飴」
 っていうんだ。おかあさんは「ちゃんと説明してあげなさいよ」っておとうさんにいうけど、おとうさんは「綿飴だ」って頑として譲らない。
「綿飴の上には鬼がいて、太鼓を叩いてカミナリを出して悪い子のヘソをとる。それにおとうさんは雲を食べたことがある。確かに甘かった」
「どうやって食べたの?」
「神社のお祭りの出店で食べた」

 そもそもぼくには歴史研究人っていうのがよくわからない。ひょっとして何かいけない仕事でもしているんじゃないか。
 お風呂に入っているとき、ぼくは思い切って、おとうさんに「お仕事って何やっているの?」って聞いてみたんだ。
 すると「夢を売ってる」と答えてくれた。「夢って何?」って聞いたら「歴史っていうのはね」っていろいろ答えてくれたけど、よくわかんなかった。もしかしたらいつものうそかもしれない。

 それでもこの間おとうさんは、お仕事の帰りぼくの大好きな電車を買ってきてくれた。小田急の新しいロマンスカーのNゲージ。とってもうれしかった。おとうさんは、
「限定品だぞ」
「2000円もしたんだ」
「俺のお小遣いから出したよ」
 という3つを何度も繰り返す。するとおかあさんは「あら恩着せがましいのね」。
 どうやらこれはうその話じゃないらしい。

(付記)……あれほどパソコンに触るなっていったのに。悪戯書きしやがって。(父より)

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コメント

>高尾さま
こちらでは初の書き込みとなります、ギエぽんです。リンクを張っていただき、どうも有難うございました。今後とも宜しくお願いいたします。「夢を売っている」、非常に感銘を受けました。より多くの方に喜んで頂けるように、今後も精進をしていこうと改めて思います。
>ご子息さま
TOMYもいいけどハセガワも…(笑)

投稿: ギエぽん | 2005/03/24 22:32

コメントありがとうございます。

「雲は何で出来ているの?」という問いに「H2O」と答えるのではなく、あえて「綿飴」と答える。そうすると子どもは「綿飴は甘くてふあふあしているな、上には鬼もいるらしい、行ってみたいなあ」となるわけです。どんどん想像力が膨らみますね。そういう体験を子どもにしてほしい。夢をみることは人間性を育むのにとてもいいかもしれないと思っています。もっとも大人になっても、妄想しすぎて、わたしみたいに非常勤生活をしているひともいますが。

歴史で夢を売れるかどうか、実のところわたしにもよくわかりません。しかしそうありたいと思っています。

投稿: 高尾 | 2005/03/24 23:14

>高尾さま
ギエぽんです。「夢を売っている」という言葉に感銘を受けたあまり、僕のブログへトラックバックさせて頂いたことをご報告申し上げます。相変わらず青臭さ全開の拙い議論ですが、宜しくお願いします。

投稿: ギエぽん | 2005/03/27 18:19

ギエぽんさん、ありがとうございます。

きのう巣鴨の町おこしのため、基調講演をして、シンポジウムにも参加してきました。歴史を地域財にというわたしの主張に、多くの地元の方が頷いてくださいました。学術論文を書くだけでなく、歴史が実際の社会にどのように役に立つのか、考えねばなりませんね。

また「文化財を大切に」を連呼するだけでなく、「文化財をどのように使うか」のヒント・素材くらいは、何かしら提示する必要があるなあ、と感じました。

投稿: 高尾 | 2005/03/28 08:11

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