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2005/03/02

(古文書入門⑤)文書館で江戸時代に出会う

 「まだ古文書を触ったことがない」という方は、なるべく本物の古文書をご覧になるのがよいでしょう。
 もちろん、本の図版をみるのもいいのでしょうし、精巧につくられたコピーでも結構ですが、やはり古文書はなるべく本物をみるのがよろしい。そちらの方が感情移入できて、古文書の勉学へのモチベーションがあがりますし、和紙の様子・帳面の仕立て方・筆の流れなどがよく観察できて、とても勉強になる筈です。
 わたし自身、江戸時代の研究をするようになってから既に久しいのですが(といっても10年ちょっとですが)、やはり本物の古文書を手にとって触れると、タイム・スリップしたような気分になって、とても楽しいものです。そういう気持ちを、いつまでも持ち続けていたいと思っています。歴史はロマンですよ。
 わたしがまだ大学院生のとき、国重要文化財の指定のため院政期の史料の整理をお手伝いしたことがありました。そこでわたしが先生に「あっ、先生。紙に指紋がついてますよ!」といったところ、その先生「あたりまえだろ、むかしのひとにだって指紋があるんだよ」。
……トホホ、先生。わたしはそんなことをいいたいんじゃありません。先生もわたしみたいに一緒になって驚いてほしかったのになあ。

 しかしこのような史料整理は大学で勉強しているからこそ経験できることです。「本物の古文書なんてどうやってみるんだ?」という方も多いことでしょう。
 もちろん博物館に行けばみることができますが、ガラス・ケースの中にあるだけで、みているだけで疲れてしまう。実際に手にとってみられるわけではありませんから〝ガラス・ケース越しの恋〟というべきか。
 ところが本物の古文書を手にとってみられる所はあるのです。それは通称「文書館」(モンジョカン・ブンショカン)という施設です。
 市民に情報提供をする主な施設としては、博物館・図書館・文書館の3つをあげることができます。博物館・図書館はよく知られていますが、それらに較べて文書館の社会的認知はあまり高くはありません。「なに、それ?」というかたも多いことでしょう。呼称はまちまちで、場合によっては「史料館」などと称していることもあり、博物館・図書館が文書館的機能を併せ持っている場合もあります。
 文書館では、歴史的文化財である古文書や、最近の公文書等までを閲覧に供します。だからいらっしゃるお客さんは多様で、土地の権利関係調査のため区画整理関係資料をみる土木関係者のかたから、ご先祖調べのかた、あるいは、わたしのような歴史学研究をするひとまでいます。「文書の図書館」といえばよいのでしょうか? けれども図書館の本の貸し出しのようなことはしていません。ふつうは文書を写真撮影したりすることだけが許されます。

 文書館では、古文書の保護のため、古文書を写したマイクロ・フィルムや紙焼き本で閲覧する場合も多く、わたしの勤務する東京都公文書館でも、古いものは原則的にはマイクロ・フィルムでの閲覧です。しかし現物の古文書を出す館も多く、その場合は古文書を触ってみることができます。たとえば、東京都だと国文学研究資料館史料館(アーカイブス研究系)や、わたしもよく研究でお世話になった埼玉県立文書館でも、本物の文書を閲覧することが可能です(一部紙焼き本などでの閲覧)。
 しかし現物の古文書を閲覧する場合、いくつかの作法があります。それを知らないといけません。たとえばマジック・ボールペンなどインクの出る筆記用具は厳禁。和紙はインクを吸い込みやすいからです。また指輪やネックレスといった装飾品も、古文書をひっかけてしまう可能性があるのでいけません。もちろん古文書を読むときはよく手を洗ってから。……このような作法は古文書の入門書にも書いてありますから、よく御覧になってください。不安なひとは慣れているひとに一緒についていくのがよいでしょう。
 大切なのは、古文書を守ってきたひとたちへの感謝の気持ちをもって、閲覧することです。

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コメント

古文書にいいイメージが・・・ありません。大学の授業の時は、イヤだったし・・・。

職場では、搬入してから一端開くまでの作業がとにかく・・・かゆい!

整理でも、調査の人手は沢山いるは、中性紙箱・封筒は高いは、沢山いるは、マイクロフィルムの購入、現像代は高いは・・・と散々です・・・。

と、作業の文句ばっかりいってますが、地域で大事に守られてきた資料を大事に調査、公表して、地域の歴史解明に努めています・・・。
(貝塚寺内の場合は、考古成果が古文書で否定される可能性も高いので、怖いです・・・。)

うちの職場、文書館ではありませんが、15万点ぐらいの古文書保管してますよ(^^

投稿: amuro1900 | 2005/03/02 20:57

「作業がとにかく・・・かゆい!」「整理でも、調査の人手は沢山いるは、中性紙箱・封筒は高いは、沢山いるは、マイクロフィルムの購入、現像代は高い」 そうですね。文書整理・研究の苦労話、ブログのネタにいいかもしれません。

「うちの職場、文書館ではありませんが、15万点ぐらいの古文書保管してますよ」 わたしが以前アルバイトしていた博物館では、仕事は文書整理ばかりでした。厖大すぎて閲覧体制まで追いつかない……。

投稿: 高尾 | 2005/03/02 22:53

私は春から法→史へ編入するのですが(その時点でぶっ飛んでますけど(笑))
いきなり古文書の講座があります・・・。
それで少ない春休み中になにか独習用の本を
読みたいと思っているのですが、
適当な入門書などあったら教えてください。

ちなみに近世をやろうとおもっています。

投稿: 甲斐の六郎 | 2005/03/24 23:23

柏書房からいくつか入門書が出ているみたいです。たとえば、
http://www.kashiwashobo.co.jp/cgi-bin/bookisbn.cgi?isbn=4-7601-2676-7
があります。
あまり「ぶっとんで」いません。もっと「ぶっとんで」いる例もあります。
がんばってください。

投稿: 高尾 | 2005/03/25 08:24

ご返答ありがとうございます。
早速本屋行って見てみることにします。
大学では
佐藤進一『古代文書学入門』法政大学出版局、1997年
を使うようです。
いま図書館使えないんで借りたくても借りられない・・・

ま、実際に史料読んでみないことには始まらないですね(笑)

投稿: 甲斐の六郎 | 2005/03/25 10:57

「佐藤進一『古代文書学入門』法政大学出版局、1997年」っていうのは『古文書学入門』のことですね。古代・中世の古文書の読解を志すひとはみんな読む。

わたしもぼろぼろになるまでよく読みました。難しい言葉はカードにして英単語みたいに覚えたりしました。懐かしい思い出です。

投稿: 高尾 | 2005/03/25 17:27

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