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2005/02/24

(史料調査)現代の「江戸時代」―「聞き取り調査」あれこれ―

 われわれ古文書読み屋でも、古文書と「にらめっこ」ばかりしているわけではありません。調査対象地に行ってひととお話をし、江戸時代の息吹を感じてくる。それがここでいう「聞き取り調査」です。
 別に気分転換のためにしているわけではありません。むしろ研究のために積極的な意味があります。

 そもそも「この平成の世にブラブラ歩いて、江戸時代のことなんかわかるの?」と思われるかたも多いでことでしょう。
 たしかに、最近は「江戸は遠くなりにけり」という感をつよくします。しかしそれでも、よく探せば、江戸時代の名残りが残っていることもあります。あるお宅に訪問して「あのう、お宅はA家と御姻戚ですね」とお尋ねすると、ふつうに「ええ、そうですよ」とお答え頂く。A家と姻戚関係を結んだのは、みんなが丁髷を結っていた江戸時代のことなのです。また、古文書を指さして「この方は」とお訊きすると、「ああ、このひととても貧乏だったそうよ」とお答え頂く。「この方」は江戸時代のひとです。

 ある由緒ある名家をご訪問したときのこと。
 その家の功績を調べようといろいろ質問させて頂きました。しかしご当主は「やはりそれを調べられては困ります」と困惑気味です。
 何故というと「地域の中で浮かび上がりたくないのです」という。

……当家は地域のひとに支えられて生きてきました、これからもそうです、たしかに当家は地域の中に大きな功績を残してきましたが、しかしそれを公表しては、自慢がましく聞こえ、地域のひとの不評を買ってしまいます……。
 そのようなお答えを頂き、結局わたしはすごすごと引き下がってきたのですが、そのかわり、わたしは大きな勉強をしました。「何故その家が江戸から現在まで地域で存続しえたのか?」という命題の答えが、なんとなくみえてきたような気がしたからです。

 よくテレビなどではお嬢様を紹介する番組があります。そこで拝見するお嬢様はたしかにお金持ちですが、やはりお金を使うのが大好きで、おまけに高学歴、いろんな意味で浮世離れをしています。
 しかし、せまい意味での「お嬢様」、つまり、いまだふるい人脈の中に生きる家の「お嬢様」は、拍子抜けするほどの常識人で、経済観念もふつうで、周囲に気配りのできるひとだったりします。そうでなければ歴史の堆積の中で生きていくことはできないでしょう。家のひとはそれがよくわかっている。もっとも、その種の「お嬢様」はマスコミうけはしませんし、本人だって取材拒否でしょう。ノーブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)、身分に伴う果たすべき社会的義務というべきか、それとも、地域や社会関係に引っ張られながら生きる富裕層というべきか。
 別に、由緒の家やお金持ちの家を礼賛しよう、というのではありません。わたしの場合、むしろそのウラに潜む社会の方に目が向いています。とにかくブルジョアの発展の歴史は一筋縄ではいかないのです。
 このように聞き取り調査をすると、いろんなことが勉強できます。何も勉強机だけではありません。

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