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2005/02/27

(世代論)30歳の話

 最近読んだ週刊誌『AERA』(朝日新聞社、2005年2月21日)に「『30歳で成人式』がいい」という記事が載っていました。20歳で成人式をやるよりも、おとなの人生の端っこを知った30歳で「成人式」をやればどうか、とあります。そうすれば市長の訓話をまじめに聞くに違いない、と。たしかに会社に入ればプレゼンテーションくらいはあるので、人前で話すひとの気持ちがよくわかっているはずです(かくいうわたしも大学の授業や市民サークルで、生徒に眠られてガックリ)。
 この『AERA』の記事は1974~75年生まれを扱ったものです。ここでは、ここらへんの世代を、仮に30歳世代と呼びましょう。わたしも1974年2月生まれの31歳でちょうど30歳世代。この記事をみて(ははあ、これは俺のことをいっているのだな)と思い、一読してみました。30歳世代のひとのいろいろな考えが書いてある。資格をとってキャリア・アップを考えるひと、NPO参加を考えるひと。30歳という境目を無感動で通過するひとは稀であるようです。
 もちろん世代論でひとの人格すべてがわかるわけではありません。しかし世代のつくった脳みそは、バームクーヘン状に堆積したいくつかの「人格」のひとつ、とはいえそうです。

 この世代は人口分布グラフでいえば第2次ベビー・ブームの頂上くらいにあたります。思えばこの30歳世代、何かと貧乏籤を引いた世代でした。
 わたしの脳裏にはいくつかの風景があります。初級・中等教育でいうと、1985年頃には校内暴力のピークを過ぎ、校則が厳しくなりはじめました。生徒としてその雰囲気を肌で感じた筈です。そしてつらかった受験。予備校で長い行列をつくって受講受付を待っていました。だから大学卒業後の就職もしんどいのですが、入社後もバブル崩壊の後始末で苦難をうけました。
 山一証券がつぶれるちょっと前、わたしは山一の〝断末魔の声〟をききました。同世代の優秀なある知人は山一証券の社員でした。彼は営業成績のノルマ達成のため、まったく意味のない書類をでっちあげようと、わたしの家に署名を求めてきました。それは利益を追求すべき会社がやるべきではない、生産性のない仕事でした。ノルマに追われる彼に責任はありません。そんな会社はつぶれてよかったかもしれません。いや「つぶれるべくしてつぶれた」というべきでしょう。
 わたしは大学院に進みましたので、この種の苦労を経験していません。しかしみなさんは多かれ少なかれこんな苦労をしていたのだろうと思います。ただ、わたしのやっている歴史学分野でも、不況のあおりをうけて、就職口はめっきり少なくなりました。
 こう考えてくると、30歳世代には、高度経済成長の負の遺産が、常にこびりついているような気がします。もっとも、いままで経済成長の恩恵をうけてきたのだから、しかたなしと引き受けねばなりません。

 「受験でいい学校入れば、いい会社に入れて、幸せな人生をおくれる」。
 みんなそう思っていました。特に、親が団塊の世代であるわたしたち30歳世代も、とりわけ(そんなもんだろう)と漠然と思っていた。しかしそれはとんでもない空手形でした。株価や土地の値段だって空手形なんだから、人生設計の思想が空手形だってなんらおかしくない。
 もちろん、いま「不況だ」といっても、戦後の混乱期や応仁の乱よりはましで、飢えることのない平和な世の中に感謝しなければならないし、価値観の興亡は世の常です。どういう世の中がきても対応できるよう、つよい精神力がなければなりませんね。苦労した分だけいいことあるさ、同世代のみなさん、がんばりましょう。

 何れにせよ、「成人式」です。
 友だちが少ないせいか、「しんどかったなあ」といいあえる同窓生もいないまま、31歳を迎えました。
 あの大学受験のとき、教室を埋め尽くした同世代のみなさん、いったい何処で何をしているのだろう? 最近そんなことを思いながら、夜は家で独りお酒を呑んでいます。

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