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2004/12/16

(言葉)「株式」

 当ブログ記念すべき初トラックバックは、なんと木村剛さん(KFi株式会社代表取締役社長)からでした(このあいだ木村さんの本を拝読したばかりです)。おかげさまで急にアクセス数が伸びました。それで今回、経済に疎いながらも、歴史からみた経済用語のはなしを用意しました。この場にて木村さんに謝意を表したいと思います。

 さて、佐藤雅彦・竹中平蔵『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞社、2000.4)は、おもしろい本でした(両方とも慶応義塾大学教授<当時>)。
 先生役の竹中さんが、経済学の根本を、わかりやすい例え話を出しながら、平易に教えてくれます。生徒役の佐藤さんも、長年のサラリーマンの経験から、的を射た質問を出し、説明に対する反応もよく好感がもてます。ただし「株の話」という章の中で、「株式」という言葉の内容に触れた箇所についてはちょっとした問題があるようです。そのくだりを以下に引用しましょう。 

竹中 だから株式のことを「シェア」と言うんです。みんなが出し合って好きなときに売れるからシェアするっていう。そういうふうにみんなで出し合って、あるときは会社に出資したり、あるときは逃げることがもできる。そして、これが肝心なことなんですが、出資者はお金を出しているだけだから、会社がもし倒産しても責任が有限なんですね。単純に株を損するだけなんです。
(高尾注、略)
佐藤 そうか、株式って「株」式なんですね(笑)。ヘボン式とか、竹中式とか、そういうナントカ式の「式」なんですね。今まで「株式」っていう言葉はいっしょくたの言葉として僕の耳に入ってたから特に意味を感じなかったんですけど……。
竹中 「株」式……。なるほどそうかも知れませんね。株のようなやり方っていうね……。
 「株式」という言葉は意外に古く、前近代にも多く出てくる言葉です。「株」は、もともと「権利」という意味があります(たとえば「御家人株」「株仲間」)。「式」もそれと同じで、中世でよく使われる「職」(しき)の語に通じ「権利」を意味している、という意見があります(網野善彦)。わたしはこちらが本当かもしれないと思っています。たとえば、江戸時代のむらの史料にも、「百姓跡式」「株式」という用例がよくあって、この場合、百姓の家を相続する権利のことをさしているからです(「近例にはかけおちのかぶ式取上る儀相止」大石久敬『地方凡例録』)。だから傍線部の佐藤さんの解釈は疑問です。「株式」「為替」(かわせ)「書き入れどき」「黒字」「赤字」等々……、経済分野にはふるい言葉が多いようです。
 しかし、そういったうるさい言葉の詮索はさておき、佐藤さんのあたまの回転の速さには脱帽です。この佐藤説の当否は別として、彼の堅苦しくない解釈が読者の理解の助けとなっているからです。それがかえって本の価値を高めていると思っています。

(付記)今日病を得ました。風邪かもしれません(子どもの風邪がうつった?)。仕事を休んでいます。わたしにとって皮肉なくらい、きょうはいい天気です。

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