(地震)続・尾張藩士の日記にみる地震予兆現象
前回の続きです。新潟中越地震の被害が増えています。深くお見舞いを申し上げます。
前回は、尾張藩士朝日文左衛門の日記、「鸚鵡籠中記」をご紹介しました。この日記には、元禄大地震の5日前・1日前に、そして宝永大地震の1日前にも、地震予兆現象らしい記述があることを述べました。わたしは最初これらの史料をみたとき、何のことやらさっぱりわからず、「ひゞきの音」「火之玉」「光物」「甚光る」とは、いったい何なのだろうかと、得体の知れぬ記述に、ただ戸惑っていたのです。
そこで、最初に、天文の専門家におうかがいしました。すると「さあ、わかりませんねえ」というそっけないご返答です。おそらくわたしの説明がわるかったのでしょう、興味関心もない、といったそぶりでした。次に、気象の専門家におうかがいしたところ、開口一番、「それは地震予兆かもしれませんね」と意外なお答えでした。地震の予兆現象として、「ひゞきの音」つまり「地鳴りがする」ということは、何となく想像できるにしても、はたして空まで光るものだろうか? と半信半疑でした。それで、よく調べてみたところ、その仰るとおりで、3つの記事は大地震の直前だったのです(!)。これには吃驚りさせられました。空が光る原因は、地盤がきしむことによるプラズマ発光現象だということです。これにより、地球の大気圏より上か下かで、学問の専門領域がくっきりわかれていることを知りました。「江戸時代の記述だからきっとデタラメに相違ない」と早合点せず、ひとに質問して正解でした。
尾張藩士朝日文左衛門。彼はたいへんな記録魔で著名ですが、彼の些細な事件の記述は、300年の時を越えて、貴重な情報を我々に示しているといえます。文左衛門の記述の信頼性も増しました。「鸚鵡籠中記」にはまだこの種のおもしろい記事が多いので、今後折りをみてご紹介してみたいと思います。
それにしても、地震は予測できないものでしょうか。今回の大惨事に直面してつくづくそう思わざるを得ません。
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