(思い出)祖母と勉強机
先日、三重県にいる母方の祖母が、83歳で亡くなりました。幼い頃からよく可愛がってもらいましたので、思い出も多くあります。
なかでも、わたしが小学校1年生のころ、祖母から勉強机を買ってもらった思い出があります。わたしの世代のイメージする勉強机といえば、大きくて、流行のアニメ・キャラクターの絵があって、成長にあわせて机や椅子が上下し、ひきだしが幾つも付いている、デラックスな机でしょう。おそらく、いまの子どもたちも、そんな勉強机を思い浮かべるにちがいありません。高度経済成長後の豊かさが詰まった、過保護な机といえます。
……ところが、祖母が買ってきた勉強机は、驚くほど小さな木製の机でした。機能といえば、短い4つの足が折り畳めるだけです。すっかりデラックスな勉強机を買ってもらえると期待していた当時のわたしは、その机をみてガッカリ、大泣きしました。もっとも、両親にあとで、ちゃんとデラックスな机を買ってもらったのですが。
さて、祖母の葬式の当日。博物館の講演の仕事が入っていたため、残念ながら途中で式を抜け出して、新幹線で東京に帰らねばなりませんでした。その講演の演題は「庶民の識字」でした。そこで用意したテキストには、寺子屋の絵を載せてあります。その絵の子どもたちがむかう勉強机は、わたしがむかし祖母に買ってもらった、小さな勉強机にそっくりなのです。なるほど、祖母の世代からしてみれば、勉強机といえば、寺子屋でつかうような、素朴で小さな机にきまっているのでしょう。
これは、新幹線の中でテキストを眺めながら、思い出した出来事です。なにやら、祖母の思い出と因縁めいているようにも思えました。それにしても、あの祖母に買ってもらった勉強机は、どこへいってしまったのやら。もう捨ててしまったのか、それとも何処かにしまってあるのか、よく思い出せません。
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