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2004/10/01

(古文書入門②)古文書講座、人気のひみつ―思ったほど難しくない古文書―

 唐突ですが、英語と江戸時代の古文書、どっちがマスターしやすいと思われますか? わたしは、断然古文書の方がマスターしやすいんじゃないか、と思います(ひとによって感じ方の違いはあるかもしれませんが)。
 古文書といえども日本語です。もちろん、江戸時代特有の言葉遣いはありますが、そんなに数はありません。また、「可被成候」を「なさるべくそうろう」と読むような、漢文の返り読みもありますが、ある程度パターンが限られているため、これもあまり難しくない(もっとも、江戸時代以前の文書には、難読語や返り読みの頻度の高い傾向があります)。
 すると、残る問題はくずし字解読のみです。このくずし字こそが、古文書解読へのハードルといっても過言ではありません。ですが、むかしは子どもも寺子屋で覚えて書いていたわけで、現代の大人が読めない筈はありません。また、江戸時代のくずし字は、多様な流儀を使っているのではないか、と思っている方がほとんどだと思いますが、原則的には、日本全国、上は将軍・諸侯から下は百姓まで、「御家流」(おいえりゅう)という流儀のくずし字を使って書きます。したがって、この「御家流」を覚えてしまえば、江戸時代のくずし字、つまり古文書解読が可能です(注1)。だから、「ワタシ、ちゃんと江戸時代の原史料を読めますよ」とアピールする意味で、「ワタシ、御家流を読んでいます」と表現することもあるくらいです。だいたい2~3年で基本的な読み方をマスターできます(これ、本当)。もちろん、難読なものを読もうとすれば、さらなる研鑽が必要ですが。
 古文書講座は、高年齢層を中心に人気ですが、この高くもなく低くもないちょうどよいハードルが、心地よく感じられるのかもしれません。年金暮らし、子どもが大きくなって、比較的時間の余裕ができ、もっと生き甲斐がほしいおとうさん・おかあさんが、比較的多いようにみえます。わたしが講師の市民自主グループでは、わたし(現在30歳)が圧倒的に若いです(もっとも最近は大学生の女の子がひとり出席してくれています)。年齢的には受講生の方が江戸時代に〝近い〟ことが多く、特に、関東大震災をご記憶の方もいらっしゃって、この年齢層の方のおっしゃることは、むしろこっちが勉強になっています。いわゆる「昔話」が重宝される場って、古文書講座くらいじゃないでしょうか。これも高年齢層に人気の要因かもしれません。

(注1)よく掛け軸にあるようなニョロニョロとした〝芸術的〟な字。あれは古文書の専門家でもすらすら読めないことがあります。「御家流」でないことが多いからです。川柳「売家と唐様で書く三代目」。「御家流」以外のくずし字が書ける、教養のつんだ金持の家のどら息子が、自分の家を売るため、「唐様」のくずし字で「売家」と紙に書く、という意味。何のために教養を積んだのやら。

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コメント

突然失礼いたします。いま、ネット辞書ウィキペディアで「くずし字」の項目が、削除主義者によって削除されようとしています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E3%81%8F%E3%81%9A%E3%81%97%E5%AD%97
「御家流」と「候文」でまとめられると言うのです。
防戦のために、「御家流」と「くずし字」は違うと書きましてから、すでに紹介させていただいたこちらのサイトにも、基本は「御家流」である、という文を見つけました。
私が「くずし字」という項目を立てた動機と、「御家流」では、どうも合わない感じがします。
どのようにご覧になりますか?

投稿: せいすいえいこ | 2007/12/30 12:04

そうですね。よく目にする地方文書(ぢかたもんじょ)から幕府や藩の公用文書まで、ほとんどが公用のくずし字である「御家流」で書かれています。しかし実際は、「御家流」のほかにも、まだいろいろな流儀があるようです。上記の文章で、「原則的には」と書いたり、唐様の話を書いたりしているゆえんは、そこにあります。
わたしは書道のことに詳しくないので、「御家流」をはじめとする所謂「くずし字」を総括してどのように立項すればよいのかわかりませんが、「くずし字」=「御家流」ではないことは確かでしょう。

投稿: 高尾 | 2007/12/30 15:07

コメントありがとうございます。私の関心は、「近代以前は筆書き文字が情報伝達の主役だった」ということの、一般的承認です。そんなのわかっている、と、大方の方は言うでしょう。しかし、文字のくずし方に標準があったことや、文体と用字について、多少なりとも立ち入った知識は、となると、全く常識の範囲に入ってきません。
高校史料は読み下しで、くずし字の和風漢文という認識が、成り立ちにくい状況です。活字史料は活字で、こんなものと誤認しやすい。
ノートでも言っていますが、歴史情報として、偏って脱落している知識だと思います。
中高校生の予備知識程度でいいから、紹介文を作りたいと思いました。広範囲の方々のご協力をお願いしています。私の項目が消えるようなことがありました場合でも、この私の目的につきましては、今後も継続的に関心を寄せていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: せいすいえいこ | 2007/12/30 16:57

わたしの「歴史講座」より「古文書講座」のほうに拘る問題関心も其処にあります。いま大学1年生用のコマ(日本史料講読)のシラバスを作っています。一応題名をつけていまして「はじめての古文書-活字からくずし字へ-」です。旧漢字・和漢文の学習からくずし字の学習へと推移するつもりです。

投稿: 高尾 | 2007/12/30 21:38

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